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スポットライト

 

 

虫と星にまなざしを

2000 年代にみるフィンランドの児童向けノンフィクション本

 

フィンランドの児童向けノンフィクション本は、2000 年に入ってぞくぞくと刊行され、作家もますます増 えています。ノンフィクション本の刊行には、大手出版社だけでなく、小規模出版社、団体、協会、博物 館、行政機関も乗りだし、多様化してきました。2000 年以降、フィンランドでは350 冊近い児童向けノ ンフィクション本が発行され、扱うテーマは裏庭の虫や料理や天文学とさまざまです。

 

Viidakkotanssi児童向けの歴史本はフィクションを通して紹介されることが多く、たとえば、この分野で活躍するマルック・ロユトネン(Markku Löytönen)は、ノンフィクション・フクロウ賞受賞作『Arabian salaperäinen vaeltaja(アラビアを行くミステリアスな探検家)』(SKS, 2001)で、フィンランド人探検家G.A.ワッリーン(G.A.Wallin)の伝記を紹介しました。また、最新刊『Viidakkotanssi (ジャングルダンス)』(SKS, 2007)では、エクアドルのヒバロ族とともにジャングルを探検したラファエル・カルステン(Rafael Karsten)について語られています。いずれもリーッカ・サンッティ(Riikka Säntti)が挿絵をほどこしました。

 

ユッシ・カーキネン(Jussi Kaakinen)、ユハ・クイスマ(Juha Kuisma)、キルスティ・マンニネン(Kirsti Manninen)による『Suomen lasten historia(フィンランドの子どもの歴史)』(Otava, 2005)は、フィンランドの歴史を壮観した一冊です。ここにもフィクションの要素があり、子どもや若者の生活を時代ごとに描写しています。

 

Luostarin Pirittaミクロヒストリーの物語や叙述のすべての描写が歴史上の人物と一致するわけではありませんが、時代のイメージや歴史的風土をいきいきと伝えます。マイヤ リーサ・ディックマン(Maijaliisa Dieckmann)は『Luostarin Piritta(修道女ピリッタ)』(Tammi, 2003)で聖ビルイッタの修道院へ読者を導き、ハンネレ・フオヴィ(Hannele Huovi)は少年の殺人事件が起きた1800年代のガラス工場を舞台に『Lasiaurinko(ガラスの太陽)』(Tammi, 1996)を書いています。ライリ・ミッカネン(Raili Mikkanen)は、『Ei ole minulle suvannot!(燃えるがごとく)』(Tammi, 2002)で情熱の作家アイノ・カッラス(Aino Kallas)の青春を描写しました。いずれも代表的な受賞作家です。

 

同じく受賞作品を数多く手がける児童作家マウリ・クンナス(Mauri Kunnas)のノンフィクション本は、ユーモアのある楽しく愉快な挿絵とともに展開されます。『Viikingit tulevat!(ヴァイキングがやってくる!)』(Otava, 2006)や『Koiramäen lapset ja näkki(わんわん丘の子どもと水の精)』(Otava, 2007)といった最近の作品では、ヴァイキングや古代伝承が紹介されています(詳しくは、フィンランド文学情 報センター(FILI)サイト内の2006 年度と2007 年度の子どもの絵本についてのスポットライトをご覧 ください)。クンナスの作品は、フィンランドの絵本のなかでも最も 翻訳され売れている一冊です。

Unennäkijä tulee

美術史では、マルヤッタ・レヴァント(Marjatta Levanto)が『Unennäkijä tulee - Hugo Simbergin kuvia(夢見る人がやって来る―ヒューゴ・シンベリの絵)』(Otava, 2000)で、フィンランド人画家ヒューゴ・シンベリ(1873-1917)の作品を軽快なタッチで詳しく紹介しています。ユリア・ヴオリ(Julia Vuori)が挿絵を手がけた同書は、2001年度ボローニャ国際児童図書賞特別賞を受賞しました。

 

Vauvan vaakaフィンランドの出版界は、子どもが自分の言葉で歌を歌ったり、わらべ歌を歌いながら手をつないで遊んだりすることを重要視しています。ほとんどの出版社 が、それぞれ独自に歌と遊びの本を刊行していて、なかにはCD付きのものもあります。これらの本には、昔から歌い継がれてきたものから最近のものまで入っ ています。たとえば、ハンネレ・フオヴィと作曲家であり教育者でもあるソイリ・ペルキオ(Soili Perkiö)が手がけた『Vauvan vaaka: lauluja ja leikkejä vauvanperheille(あかちゃんの秤―親子のための歌と遊び)』(Tammi, 2002)は、二人の現代作家による児童詩集です。ペルキオの弾むようなわらべ歌は、家庭に留まらず、全国各地の歌と遊びの教室や小学校や劇場で演奏され ています。

 

楽器を紹介する本も登場しました。リーサ・ラウエルマン(Liisa Lauerman)とイスモ・レコラ(Ismo Rekola)の『Villit pillit - lasten urkukirja(やんちゃなふえ―子どものためのパイプオルガン)』(Lasten keskus, 2007)は、パイプオルガンがつくられる様子を架空の物語を通して紹介しています。パイプオルガン音楽について、楽器の構造について、さまざまな演奏方 法については、物語に挿入したり付録で説明したりしています。

 

ヤングアダルトと一般書の境界を行き来するノンフィクション本もあります。フィンランド国内のミュージシャンやバンドについて書かれた本は、その一例で す。こういった本は、手早くまとめられたファンのための商品か、スターへの道のりやハードな仕事、音楽制作や成功への経緯が語られた写真集のようなもので す。ユホ・ユントゥネン(Juho Juntunen)がフィンランドのロックバンドHIMについて書き下ろした伝記『HIM: synnin viemää(ヒム―罪とともに去りぬ)』のように、バンド生活やミュージシャン人生を語る本が2000年になって多く刊行されています。

 

里親養育、養子縁組、再婚家庭といった様々なライフスタイルについて書かれた本が、大手出版社に加えて団体や協会からも刊行されています。幼児向けとし て、クリスティーン・ヴァリヴァーラ(Christine Välivaara)とキルスティ・プサ(Kirsti Pusa)の絵本『Miuku Pörrönen(ミウク・ポッロネン)』Xing(Pesapuu ry, 2006)があります。この本は、両親が育児できなくなったために、妹とともに里親に育てられることになったミウクちゃんの物語です。マイヤ・カルヤライ ネン(Maija Karjalainen)、ピア・ニュナス(Pia Nynäs)、テュッティ・トゥーナネン(Tytti Tuunanen)の『Auringon lapset: adoptiolapsemme Kolumbiasta, Etiopiasta ja Thaimaasta(太陽の子どもたち―コロンビア、エチオピア、タイからやってきたわが子)』(Lasten keskus, 2005)は、年長の子どもと両親向けに養子縁組について書かれた本です。同じテーマで、レーナ・ヴィルタネン(Leena Virtanen)とサッラ・サヴォライネン(Salla Savolainen)が、中国からフィランドに養子縁組された女の子の日常を絵本『Pikku Xing(ちびのシンちゃん)』(Tammi, 2004)でフィクションを通して描いています(詳しくは、FILI サイト内の2006 年度の子どもの絵本につ いてのスポットライトをご覧ください)。

ノンフィクション・フクロウ賞受賞作家の児童精神科医ライサ・カッチャトーレ(Raisa Cacciatore)は、思春期の若者のために、『Hei beibi, mä oon tulta - Nuoren oma seksikirja(セックスを知るために)』(WSOY, 2004)、『Legopalikoista leopardikalsareihin - Pojan matka mieheksi(少年から男性へ)』(Tammi, 2001)といった性教育本を書いています。

 

Voi Eurooppa!カロ・ハマライネン(Karo Hämäläinen)の『Voi Maamme!(ああ、フィンランド!)』(Tammi, 2001)と『Voi Eurooppa!(ああ、ヨーロッパ!)』(Tammi, 2001)では、フィンランドと繋がりのあるヨーロッパが小気味よく紹介された図解つき地理の本です。ヘルシンキ市立博物館が発行した『Oma Helsinki-kirjani(私のヘルシンキノート)』(第2版2004)は、ヘルシンキの町の建築や歴史や図解が掲載されています。アイノ・ハヴ カイネン(Aino Havukainen)とサミ・トイヴォネン(Sami Toivonen)の絵本『Tatun ja Patun Suomi(タトゥとパトゥのフィンランド)』(Otava, 2007)は、フィンランドの地理と文化についてユーモアを交えながら詳しく紹介し、フィンランディア・ジュニア賞を受賞しました(詳しくは、FILI サイト内の2007 年度の子どもの絵本についてのスポットライトをご覧ください)。

 

フィンランドでは、ここ数年にわたって料理本が大変なブームになっています。大人向けの有名シェフの料理本に並んで、児童文学では童話や漫画のキャラク ターの料理本が人気です。エリナ・カルヤライネン(Elina Karjalainen)とハンヌ・タイナ(Hannu Taina)の『Uppo-Nallen kokkikoulu(くまのウッポの料理教室)』(WSOY, 2002)ではくまのウッポが子どもたちにやさしい料理を伝授し、ヘルシンキ生まれのシェフのサミ・ガラム(Sami Garam)の『Aku Ankka: puolialaston kokki. Sami Garam kokkaa herkkuja Ankkalinnasta(ドナルド・ダックの厨房から―サミ・ガラムのごちそう料理)』(Sanoma Magazines Finland, 2004)ではドナルド・ダックがガラムのレシピで腕をふるいます。カリ・オヤラ(Kari Ojala)とテルヒ・エケボム(Terhi Ekebom)は、『Lasten keittokirja(子どものための料理本)』(Etukeno, 2007)で健康な食生活や計量や食材の買い方について説明しています。エケボムのレトロながらも新鮮で明快なイラストが、オープンサンドイッチの作り方 から中華鍋の使い方まで教えてくれます。

 

料理の本だけではなく、手芸と工作の本、トレッキングガイドブック、ガーデニングの本、ペットの飼い方ガイドブックも出ています。ピヒラ・メスカネ ン(Pihla Meskanen)は『Pieni majakirja(ちっちゃな秘密基地の本)』(Tammi, 2006)で小屋の作り方を手ほどきし、アンネ=マイヤ・インモネン(Anne-Maija Immonen)は『Joka tyypin virkkauskirja(あなたのかぎ針編み)』(WSOY, 2006)でかぎ針編みを紹介しています。トゥイレ・カイミオ(Tuire Kaimio)は『Hevonen. Ensimmäinen oppaani(馬とはじめの一歩)』(WSOY, 2006)で、馬の世話や馬との信頼関係の築き方を丁寧に語っています。

 

トゥー ラ・コロライネン(Tuula Korolainen)、リーッタ・トゥルスト(Riitta Tulusto)、レーナ・ルンメ(Leena Lumme)は、ノンフィクション・フクロウ賞受賞作『Pummelo ja rumeliini: kaiken maailman hedelmiä(ザボンとタンジェロ―世界のくだもの)』(Lasten keskus, 2000)や『Sillä sipuli: kasviksia kasvaville(やさいを知ろう―のびざかりの子どもたちへ)』(Lasten keskus, 2001)で果物や野菜について楽しく学ぶことを勧めています。ほかに、茸、ベリー、魚をテーマにシリーズで紹介し、各巻に基礎知識や詩や物語やレシピを 載せています。

 

Saga Blomスウェーデン系フィンランド人アンナ・グリッチェン(Anna Gullichsen)とカラ=マリア・クヌーティネン(Cara-Maria Knuutinen)の挿絵によるカラフルな絵本『Saga Blom(サトゥと洋なしの精)』(Söderströms, 2008)では、白夜の季節にあたる六月の庭の植物の手入れについて語られます。

 

 

フィンランドでは自然科学本の刊行が昔から盛んです。花壇、街角、庭を舞台に、自然や動物をテーマにした本がたくさんあります。アンネ・ペタイネン (Anne Petäinen)とミカ・ラウニス(Mika Launis)の『Konnankierros(ヒキガエルと仲間たち)』(Tammi, 2003)では、ヒキガエルのインタビュー形式で家の周りの動物たちが紹介されます。

 

フィ ンランド人天文学者マルクス・ホタカイネン(Markus Hotakainen)の『Tildan tähdet. Lasten oma avaruuskirja(ティルダのおほしさま―子どものための宇宙の本)』(WSOY, 2007)では、熊や犬やクジラの絵が描かれてあって、子どもたちに何の星座かすぐにわかるようになっています。医学の本では、細菌学の研究者ペンッ ティ・フオヴィネン(Pentti Huovinen)が『Heippa, täällä bakteeri(ぼくはバクテリアです。どうぞよろしく)』(WSOY, 2007)で、子どもの身の回りや体内にいる善玉菌や悪玉菌について紹介し、雑巾やキシリトールガムで菌が増殖したり消滅したりすることを教えています。 いずれの本も、読者に身近なテーマで具体的に説明しています。

 

 

フィンランド児童文学機構所長

カイス・ラッテュア

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海外著作権に関する各出版社の連絡先:

 

 

Otava

Lasten Keskus

SKS

Söderströms

Tammi

WSOY

 

その他の日本語版スポットライトの記事:

 

それぞれの道をゆく言葉と絵
2007 年秋に刊行されたフィンランドの子どもの絵本を読んで

 

漫画的物語と現代画
2006 年秋に刊行された絵本作品から

 

 

全てのスポットライトの記事 (in English)

 

 

ノンフィクション・フクロウ賞(Tietopollo-palkinto)受賞作家一覧

 


2007 Hannu Karttunen(ハンヌ・カルットゥネン)、選外佳作として、Jukka Laajarinne & Sami Saramaki (ユッカ・ラーヤリンネ&サミ・サラマキ)

 

2006 Jussi Kaakinen & Juha Kuisma & Kirsti Manninen(ユッシ・カーキネン&ユハ・クイスマ&キ ルスティ・マンニネン)

 

2005 Mauri Kunnas(マウリ・クンナス)

 

2004 Markku Loytonen(マルック・ロユトネン)

 

2003 Raisa Cacciatore(ライサ・カッチャトーレ)

 

2002 Kristiina Louhi(クリスティーナ・ロウヒ)

 

2001 Tuula Korolainen & Riitta Tulusto(トゥーラ・コロライネン&リーッタ・トゥルスト)

 

2000 Marjatta Levanto(マルヤッタ・レヴァント)

 

1999 Maija Larmola & Leena Lumme(マイヤ・ラルモラ&レーナ・ルンメ)

 

フィンランド・ノンフィクション作家協会(Suomen tietokirjailijat ry)が1999 年より主催しているノン

 

フィクション・フクロウ賞は、児童向けノンフィクション本に長年携わり、功績を上げてきたノンフィク ション作家やノンフィクション作家グループに贈られます。ノンフィクション・フクロウ賞に加え、新た にノンフィクション・ラウリ賞(Tieto-Lauri)が2007 年に設立されました。賞金はフィンランディア賞 に並ぶ26,000 ユーロです。授与式はラウリ・ヤンッティ財団が三年に一度行います。第一回受賞者の発 表は2009 年です。

 

(訳 末延弘子)